犬の門脈シャント

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【症状】肝性脳症によるよだれやふらつき

通常は、消化管内で産生されたアンモニアなどの毒素は腸管から吸収されると、門脈と呼ばれる血管を経由して肝臓に運ばれ無毒化されます。

しかしこの門脈と全身性の静脈の間にバイパス血管があると肝臓で解毒されるべき有害物質が肝臓で処理されないまま全身(体循環)を循環することになります。

その結果、様々な異常を起こし、その状態を門脈体循環短絡症(門脈シャント)といいます。

門脈体循環短絡症では、しばしば肝性脳症を起こします。
肝性脳症の症状として、よだれやふらつき、一時的な盲目、痙攣などの中枢神経症状が特徴的で、食後1~2時間過ぎたころに悪化傾向を示します。

そのほかの症状としては、慢性的または間欠的な嘔吐や下痢などの消火器症状、さらに尿路結石の合併例では頻尿や血尿などの膀胱炎症状が認められます。

また、先天性の場合には発育不全が起こり後天性の場合には、削痩や食欲不振、腹水症などの肝不全症状が見られます。

門脈体循環短絡症の犬は一時的に発育が悪く、活動性にとぼしく眠っていることが多いとされています。
食後2時間ほどで激しいよだれをたらしたり、壁伝いに歩きまわるようになります。

【原因】先天性がほとんどで小型犬より大型犬に多い

門脈体循環短絡症には、先天性と後天性にわけられ、多くは先天性により起こります。
犬では特にミニチュアシュナウザー、ヨークシャーテリアはこの病気にかかりやすい犬種です。

先天性の門脈体循環短絡症ではバイパス血管の位置により肝内性と肝外性に大別され前者は大型犬に後者は小型犬によく見られます。

後天性での門脈体循環短絡症は持続的な門脈高血圧症がみられる病気の際に門脈と全身静脈の間に側副血行路が形成されたものです。

門脈高血圧症がみられる病気には重篤な慢性肝炎や肝硬変、肝繊維症、先天性の肝動静脈ろうなどがあります。

【治療】先天性なら外科手術で長期延命が期待できる

治療には、内科的治療と外科的治療に大別されます。
内科的治療には症状の緩和とある程度の延命を目的とし、外科的治療が困難な場合や外科的治療の前後に行うもので、消化管内毒素の産生と呼吸を抑制するための薬物の投与や低タンパクの食事療法などによる肝性脳症の改善または予防が中心となります。

外科的治療は、先天性の門脈シャントの場合に限り実施が可能で根治や長期延命が期待できる唯一の方法です。
外科的治療は先天的なバイパス血管を閉鎖することで肝臓の機能を改善させりことができますが、一度にバイパス血管を閉鎖することが不可能なこともあります。

【予防】早期発見に務める

門脈体循環短絡症は明確な予防法がありません。
好発犬種は定期的な健康診断を行い、早期発見に務めるようにしてください。

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